テレワークの日。コロナ禍で良かったことの1つだ。レクや会議で業務時間が細切れになりがちなので、週に1度はテレワークを入れている。通勤時間と、オンライン会議が無ければ化粧もコンタクトレンズもパスできる。
子どもがまだ冬休みなので、45分のお昼休みに親子丼を作って食器洗ってたら家の方が疲れた。でも、お互いに仕事と宿題をしている静けさは嫌いではない。
年末に課題だったことを、いくつか動かしにかかる。ホンマは区役所の仕事ちゃうやろと思うものの、地域の人に「八方ふさがり」と言われた案件がどうにも気になって、解決の可能性を探りたい。他都市の事例を見ると、まだやれることはある。
集中していたら、ゆらりと床が揺れ出した。鳥取・島根で震度5。大きな被害が無くてよかった。妹が鳥取に住んでいる。元旦に能登半島沖地震があったように、いつ来るか、どこに来るかわからない。区長の荷が重い、と感じるのは南海トラフ巨大地震のことを考える時だ。
作るべき書類や決裁を済ませ、eーラーニングに取り掛かる。1本は環境管理、1本はカスタマーハラスメント。公務員というだけで、ひどい言葉を日々投げられる。民間から来たので、本当に「区長を出せ!」と窓口に来る人がいた時には驚いた。
年末に来た匿名のハガキが忘れられない。「お前のせいで港区は衰退した」「期待外れ」「働いて働いて働いて区民に尽くせ」。どんな人で、どんな場面でそう思わせてしまったんだろう。全てを伝えることはできないし、実際に課題解決まで至れていないこともあるので、こうした言葉をもらうとひどく考えてしまう。
民間の時にはわからなかった、公務員というだけで「税金泥棒」と言われ人権が無視される辛さ。ようやくカスタマー・ハラスメントの基本方針ができた。落ち着いて対話ができるよう、理解を求めたい。
業務時間の終わりとなり、報告を入れる。クリーニングを出しに行った後で、娘とワンタンの皮に溶けるチーズを挟んで揚げる「チーズのぱりぱり」と呼んでいる料理を作る。メインの夕食は、ゆる夫に任せる。
その間に、もらった退職者向けの資料を読んで国民保険料や娘の学費を考えてうっすら寒気がしてきた。28歳で起業して、39歳まで半年先の売り上げが立つようにずっと動いてきた。52歳、何も見通しがない。当時の気力も体力も無い。当然、自営業時代のクライアントも消滅している。
加えて、企業や店舗のプレスリリースを書き、時には広報企画から提案し、サイトを作ってコピーライティングをして……という当時の仕事がほとんどが無くなりつつある。マスコミがSNSマーケティングに取って変わり、AIがプレスリリースを媒体に合わせて数十秒で書き分けられるこのご時世、12年前の仕事がまるっと消えている。困った。
会う人会う人に「4月からどうするの?」と聴かれ「真っ白です!」と答え、「山口さんなら引く手あまたでしょう」と言われる。今は自信を失くしているので、このやりとりが地味にメンタルを削っていく。無償のオファーだけ、どんどん来る。来年度はPTAでも役が決まっているので、ボランティアはキャパ超え。断っている。
仕方なく、転職サイトに登録だけして書いてなかったプロフィールと職務経歴書を全部埋めた。真っ白ということは、可能性は無限とも言える。DX担当、AIコンサルタント、公民連携アドバイザー。12年前には無かった職業が並んでいる。
寝る前に、港区の観光データについてChatGPTとやりとりする。さすがに区単位は出せなかった。ルーティンになっている「#まいにち防災」を投稿して、少し運動をして寝た。少なくとも、働ける身体にしておこう。
あと83日。

