起きて大きめのボウタイブラウスとパンツスーツを着て、化粧をする。人前に立つ仕事、それも式典での挨拶はいつも朝から緊張する。
2部の開始より早く、ゆる夫に送ってもらう。池島小学校の50周年記念式典で、教育長の祝辞を代読する。複式学級が2学年ずつできていて、私が来て学校再編を決めた。
令和11年3月末には、3小で新しい学校となる。自分の挨拶で触れるか迷い、校長先生も実行委員長も触れなかったので、再編の部分は飛ばして読んだ。
夕べ、寝る前に教育長の祝辞を読む練習をして、2行書き換えた。「池島小学校は50年の間、着実な発展を遂げられました」「今後のますますのご発展を祈念して」……前も同じく再編予定校の周年記念の挨拶にこの文面で書いてきて、指摘した。
発展してたら1学年10人を切り、統廃合することにはならない。子どもたちのために、苦渋の決断で再編を受け入れてくれた学校にも地域にも無神経な言葉だ。これからも池島の子どもたちの育ちを支えてほしいと、願いを書き換えた。
共感力に欠ける、前例に侵されて「仕事」ではなく「作業」しかできない人が残念でならない。下手に指摘すると「区役所で作れ」になりそうで、担当者からはそれ以上言えない。私からフィードバックしておくことにする。
腹を立てていた気持ちも、池島小学校の講堂でオーボエの音が柔らかく鳴り出した途端に溶けていく。子どもたちと教職員だけで50周年をお祝いする第一部で、古部賢一さんのミニコンサートがあるので、早く来た。
新日本フィルの主席オーボエ奏者を若い時から努め、各国のオーケストラにもソリストで呼ばれる古部さんは、池島小学校の卒業生だ。
2部では子どもたちと演奏をしてくださった。「ふるさと」やサン・サーンスのオーボエソナタを吹いた後、「ジブリ映画の音楽は、私のいたオーケストラが演奏してきたので」と「千と千尋の神隠し」から「あの日の川」が美しいピアノ伴奏で始まった。
何度も何度も観た大好きな映画の音が、鳴らしていた本人の楽器から豊かに、そして切なく鳴り出す。
涙腺が弱い私は、「千と千尋の神隠し」の公開初日から今までを思い、泣く。
7月20日の朝に婚姻届を摂津市役所の時間外窓口に出し、満員の映画館で観た。それからずっと、子育ての節目節目にこの映画はいつもある。
古部さんのご実家は池島にあった銭湯だそうだ。そのご縁と、この作品が時空を超える話であることを踏まえて演奏したと、お話しした時に教えていただいた。子どもが「乗り越える」話でもあり、この日にふさわしい。
2部では「ふたたび」(ハクの本名がわかるクライマックスのシーン)が講堂に満ちた。映像が頭の中を駆け巡る。
続く合奏「ホール・ニュー・ワールド」では、子どもたちの生命力を放つ音に、古部さんのオーボエが優しく寄り添っていた。こんな美しい時間に出会えるから、学校は素敵だ。
いくらネットが普及しようとも、今日のようにプロの演奏に触れ、共に合奏し、仲間や教職員や地域のみなさんと顔を合わせて学校のお祝いをする「学校という場の力」を感じた。素敵だった。
ホテルで開催された祝賀会での挨拶では、校長に戻った気持ちで素直に伝えた。
祝賀会では池島小クイズで自分のテーブルが全問正解し、大量のうまい棒を賞品でもらった。お子さんに持って帰りと、みなさんが言ってくださるので抱えて帰る。
バレンタインデーなので、なんばの高島屋に寄る。ゆる夫用と言いながら家族で食べるチョコ、缶の可愛い娘用チョコ、スイーツ男子の息子用といくつか買い込む。
なんばパークス横の「星空スタンド」はこの土日までやっており、当然素通りでききない。
「志田泉」のオシャレなラベルのお酒を選んで、鳥取のお米のPRで塩むすびを並べて出店してた人に「売らないと帰れないんです」と言われたので1つ買い、米で米を飲んだ。さすがにアテには寂しいので、おでんを買い足す。
帰ってチョコを子どもたちに渡し、少し寝た。起きると晩ご飯はカレーで、パスするつもりが食べてしまった。
そして「明日友達が来る」という息子の発言に慌ててコタツ周りの片づけを、家族を追い立てながらやる。
人が座れるぐらいにはして、ちゃんみなとCHIKAの「美人」のライブを観る。息子も鼻歌がミセスに時々ちゃんみなが混じる。このカッコの中の歌詞が好きだ、とボソッとつぶやいた。
♪ 悲観的いや美学的(前例がないのは怖いかい?)
磨いたらダイヤ美しい(ならお手本になりなさい) ♪
おっ同類、と握手したくなる気持ちを抑え、オカアチャンも好きやでと返す。前例が無い立場ばかりやってきて、私は誰かのお手本になれただろうか。
ベッドに入ったが、夕方寝たせいか眠れない。

あと44日。

