2026年2月22日(日)

今日も緊張する仕事がある。アルトサックスを「ふれあいフェスティバル」のステージで、挨拶代わりに吹くことになっているからだ。

 「ネタになる」を思いつくとやってしまう性格、なかなか治らない。4年前、港区長に決まったときに「中央突堤で港区長がサックス吹いたら面白そう」と思って生野区長の時の退職金で、買ってしまった。

三木楽器の個人レッスンに通っていたものの、日曜日のレッスンに仕事が重なってなかなか行けない。1ヶ月に1度ぐらい行っては、先生に「すみません、一度も触ってません……」と一進一退を繰り返して全然うまくならない。

 そうは言っても、新しい港区民ホールで一度ぐらい吹いてみたい。4年近くかけたコストと時間がもったいない。最後の半年を切って「このままでは成仏できないので」と港区の音楽イベントで「聖者の行進」を会場を不安にさせながら吹き、みなさんに笑ってもらって「ネタになる」は達成した。

 やっと自分で自分に課したミッション完了と思っていたら、区長室に生涯学習推進員の役員の方がやってきた。「2月22日の『ふれあいフェスティバル』でぜひ一曲」……断れなかった。

 この詰まったスケジュールの合間に、部屋を借りて練習し、区民センター館長の浜ちゃんこと浜田さんにタンバリンでの助っ人をお願いし、今日が本番。「風になりたい」なら何とかノリでごまかせるだろう。

 ゆる夫に車で送ってもらう。道が大阪マラソンの影響で渋滞しており、早く入って音出しする予定が時間がなくなってくる。やむなくケースからサックスを取り出してセッティングし、車内で音出しをして首からぶら下げて降り、控え室に急いだ。

直前の練習で、選び抜いた吹きやすいリードのはずが時々ピーピー言い出す。ナニこれナニこれと「アルトサックス ピーピー鳴る」と検索する。リード、アンブシュア、息の入れ方のどれかが悪いって書かれても今さらどうにもならん、とリードの位置を直してステージに向かう。

 みなさん、サックスをぶら下げている私を見て喜んでくれて、区長だからって許されてるなぁとつくづく思う。

 挨拶でこのイベントの実現や日頃の生涯学習を支えてくださるボランティアのみなさんに感謝を述べ、サックスを習い始めた理由と真面目に仕事をしていたらほぼ練習できずだったこと、変な音が出たら「仕事がんばってはったからしゃーないな」と思ってくださいと言い訳して浜ちゃんにカウントを取ってもらう。

ちょっと指が回らず怪しげだったところからは、わりとええ感じに吹けていたのに最後の「風に~風に~なりーたいーー」のあたりで「ピーーーッ!」と高い音が混じって笑いが起きた。

 いやもう、まさに「ネタになる」終わり方で楽しんでいただいたならよかった。自分も吹き終わってゲラゲラ笑ってしまった。

 後から諸方面から写真や動画が届き、時間差で恥ずかしい。もういい。

 ちなみに「中央突堤でサックスを吹く」は高いサックスを買ってから「あそこは港湾緑地なんで音出し禁止ですよ」と聞かされ、映画の野外上映イベントも音声はイヤホンで聞いていると知って衝撃だった。その問題を前区長や区長会の部会に相談し、当時の此花区長も動いてくださって社会実験として音出し可能になり、今はルールが変わっている。

 「みんながルールや前例が無いからと諦めている」ネタに出会うと解きたくなるのも性癖。そういう意味では思いつきでサックスやり始めて港区のためにはなったと思っている。海辺での音楽や映画上映イベントで、これからも盛り上げてもらいたい。

 その後は区民のみなさんの生け花や手芸の作品を見て、ステージをいくつか見た。練習をして、音符を追いかけ、身体の使い方に集中し、緊張に耐え、終わって舞台袖で仲間と笑い合う。生涯学習の意義を感じる。

 今日はこのイベントだけで疲れ切ったが、仕事はまだ続く。

 10キロ近いサックスケースを担いで、Asueアリーナに移動する。国際女子車いすバスケの大会に来賓で呼ばれている。すき間時間にコンビニで買ったお弁当を八幡屋公園の木の下で食べる。風が暖かい。

 会場に入るとHANAの「Tiger」がかかっていて心の底でブチ上がる。スポーツの試合にふさわしい。名前を呼ばれたら、会釈をするだけの仕事。終わって30分だけ観戦した。ドイツと日本の対戦で、車椅子をキリキリ取り回し、ハードにぶつかり、片腕でシュートを決めるカッコいい姿を目に収めて会場を出た。

 ゆる夫に迎えに来てもらい、家でサックスを下ろしてしばし呆然とする。フィギュアスケートのエキシビジョンを、コタツに入ってほぼフルで見た。金メダリストになると思ってなかったであろう、男子シングルのシャイドロフ選手のパンダの着ぐるみに娘と爆笑した。

 夕方、ちょっと時間があるなと思って100均で入れ物と材料を買っていた「グラスケーキ」にチャレンジする。カステラといちごに、生クリームを泡立ててセットしてみたが、あまり映えなかった。スイーツ男子な息子は期末テスト前で家にこもっており、「味は悪くない」と食べていた。

夜は食事の後に、漫画を読んだ。『カモのネギには毒がある』の最新巻は、震災に乗じた詐欺がテーマ。平成30年の台風21号の後にブルーシートを高額で売りつける詐欺があった。読んでいるとドラマ「リーガルハイ」を思い出す。この漫画も映像化してほしい。

 自分の出版企画書を書きながら、Netflixの「こんまり」ドキュメンタリーを見始める。これから片づけをするモチベを上げるためだ。夫が山ほど野球カードを、妻が大量のクリスマス飾りを蓄積している家で、我が家も見回すとフィギュアとその箱と思い出の品にまみれており、暗澹とする。

 私はケーキを作って漫画を読む暇があれば、片づけをすべきだった。おそらくもう吹かない、サックスを部屋の隅に押し込んで寝た。ときめくか、と言われると迷う。

あと36日。

私の音に不安げなみなさま。