娘の高校の卒業式。年に1回見られるかどうかの、ゆる夫のスーツ姿。ウエストから変なヒモが出ている。
「何それ」「ユニクロで買った」
一見、スーツのパンツに見えるけれどウエストがヒモで調整できるもので、3年前の入学式では太り過ぎてスーツが入らず苦戦していたのでまぁいいかと見逃す。上着を着るとわからない。
私も欲しいと言ったら負けなので、同じくパンツスーツに下腹を押し込んでベルトを締める。また運動をサボっている。
卒業式、女子高なので自分の30数年前の記憶がくっきりよみがえる。偏差値の低い女子高だったが、そこでようやく私は「井筒は、文章がうまいな。作家になれ」と現代国語の先生に言われ、現実から逃げるために浸っていた読書が力になっていることを知った。
その先生は口だけでなく、私に書かせていくつか賞を獲らせてくれた。3年間同じクラスで男子の目も無く、のびのびして私は少し自尊感情を取り戻した。
娘はコロナ禍もあって中学で少し学校に行きづらくなった時期もあったが、遠いのに高校には喜々として通っていた。その制服姿も、今日で最後。どこに娘が座るかを読み違え、離れたところから見守る。入場と退場の横顔は、撮影できた。
校長先生の式辞ではご自身が民間の経営者から10年前に思いがけず校長となり、「なりたい職業につける人はほとんどいない、人生はご縁、巡ってきたタイミングをつかんで人生を切り開け」といった話をソフトにしていて、自分が言われているような気になった。
答辞では学年全体で文化祭で合唱した「ダーリン」の一番インパクトのある「あの子にはなれないし、なる必要もないから」という歌詞を引き、自分らしさを大事にして生きていくと卒業生代表が述べ、大森元貴センセイ!響いてますよ!と叫びたくなる。
その後、教室で担任と別れを惜しむ場面に保護者も立ち合う。教室には一人ひとりが卒業までのカウントダウンの数字を書いた紙が貼られている。さすが美術系のコース、色とりどり。娘が担当した「7」を見つけて笑った。
「ドンキやねん」
ドン・キホーテ風のPOPとキャラが泣いていた。おもろい子やな。あなたはあなたのままで、いてね。
娘は友だちとご飯を食べるそうで、でっかい油絵と絵具セットを持って帰らされる。甘い私たちは、娘の思い出話をしながらとぼとぼ帰った。
一旦帰って、毎月出している「区長室だより」を慌てて書き始める。2月は28日しかないのに毎年26日ごろに気づいて焦る。頭の中ではほぼ書いていたので、パソコンを開いて打ちまくる。そのまま車で教育フォーラムに送ってもらい、会場についてからも開始ギリギリまで。
選挙のお礼をもう一度、新しい区長が決まったのでご紹介。最近連載しているミセスの歌詞から仕事を考えるシリーズ、今回は「Attitude」にした。
♪ どうにか届くように 届くようにと綴る
でもやっぱり100は無理 ちょっと「あむり」で終わり ♪
せっかくがんばってる仕事、イベント、困っている人に届けたい情報。「あ、無理」で終わらせないで届けてほしいという願いをこめた。
今月のオススメ本は『半分姉弟(1)』(瀬見よいこ)、ルーツが複数の国の若者の抱える心情を少しは理解できるよと紹介する。最後に3月10日にある「港区スマホ・AIサミット」に良かったら来てねと伝えて書き終え、フォーラムが始まった直後に送信した。
分科会は日本語指導と生成AI活用を行ったり来たりするつもりが、日本語指導の実践事例を聞き入ってしまった。校長時代、中国から続けて転入生が来て、国語の時間に校長室でリライト教材を作って指導をした。
中国語で「海のいのち」を読んで感想を中国語で書いた上で、日本語に直して教室で発表した。そのプロセスで、子どもたちは新しい日本語を覚えていく。
南小学校の山﨑一人校長に教えを請い、見よう見まねでやっていた渡日の児童生徒への日本語指導。答え合わせを聴くようで、色んな学校の実践をメモする。渡日のこどもたちの不安に寄り添う、先生たちの想いにも共感する。アセスメントに使う「ことばの発達と習得のものさし」を知って嬉しかった。これは広まってほしい。
最後にちょっとだけ入った生成AI活用の話を聞きながら、自分のPCだったので「ことばの発達と習得のものさし」を「中国から来て1年の小学校3年生向けのチェックテストにして」とClaudeに入れるとあっという間にテストを作ってくれた。現場が助かるツールがどんどん作れる。
家に帰ってChatGPTに「『注文の多い料理店』を、日本語が苦手な子向けのリライトと中国語の対訳形式で書き直して」と指示したら、当時2時間はかかっていた作業が数分でできた。
生成AIを活用して、日本語が苦手な子の教科指導のフォローができそうだが、学校のネットワークで使えるAIはここまでできるだろうか。セキュリティと実用性。わかってはいるけれど、行政は本当に進まない。もどかしい。
夜は気心の知れた職員に、天王寺で小さな会に誘ってもらう。4年、あっという間にやったなぁ。可愛いカードケースと名前入りのどっしりしたボールペンをもらい、お礼の手紙を読んでくれた。
ぐっとくる手紙を彼が読み上げてる最中に、無神経な店員が伝票を置きに来たタイミングが絶妙で、少し涙目になりかかってた私ともう一人で爆笑してしまった。ありがとう、一生忘れられへんわ。
「片時でも志をともにご一緒できたことを光栄に思います」
ええ言葉やな。しかし、その後に「ウルトラソウル」の歌詞が書いてあって本気なんだかチョケてんだか。
私の卒業式も、もうすぐ。
帰ってこども達と朝ドラを観て、HANAの映像をいくつか観て、娘がもらってきた花を飾って寝た。
あと33日。

