里親セミナーに出るので、少し色の柔らかいスーツを着る。投影資料はほぼ完成していたので、ちょっと手を入れてUSBに移そうとしてカバンを探る。手に触ったのはUSBメモリではなく、つるっとした四角い板。何だこれ、と外に出して声が出た。
なんばのホテルの番号札だった。金曜日の区PTAの会で、コートをかけた時にハンガーについてた番号札を渡された。クロークに預けたなら絶対に忘れないが、帰りにコートを自分でハンガーから取って、そのまま帰ってしまった。
慌ててホテルに電話する。1階のフロントに返すことになった。遠回りして帰るしかない。げんなりする。
まだ鼻がぐずついていて、完璧な体調とは言えない。そもそも、絶好調の日なんて記憶にほぼ無い。血圧は10時でも100を超えない。常にけだるく低空飛行なのに、慣れている。仕事に支障は無い。
2週間に1度の課長会、大きな課題はないが選挙事務の注意事項を共有する。もう今度の日曜日には選挙だ。ミスの無いように……とこのスケジュールでお願いするのも酷だが、お願いをするばかり。日に日に、期日前投票に来る人が増えている。区長室と投票所のある6階がにぎやかだ。
2月中には新しい区長も決まるだろうから、新旧区長の同席での懸案事項レクを依頼する。引き継がれてきた思いや流れのニュアンスが変わってはいけないのと、部下にも確認する意味を持たせるために同席レクにしている。
港区に来た時は、出た区と区長が入れ替わりだったのでスムーズだったが、今度は港区のことを知らない人が来るかもしれない。前の時は主要項目を全部やったが、選挙があってみんな多忙なので今回は絞ることにした。
他にもレクや決裁を済ませ、終業後に森ノ宮に向かう。大阪市市民活動ポータルの主催する「ハイパーセミナー」で、里親について経験者として語る。
大阪市に委託されている里親支援センター長の関本勇義さんが制度や実態を話し、赤メガネ先生こと中川悠さんが司会を進めてくれる。人数は少なめだがご縁のある方が来てくれていて、嬉しかった。
私は自分の生い立ちから児童福祉や教育に想いがあること、校長時代に一時保護された子に辛い思いをさせた経験、地域に養育里親がいるべきだとゆる夫を説得して登録したこと、2人の子どもを預かった時の経験を話した。
母数が増えなければ、マッチングが難しい。私も依頼があっても受けられない時は断っているので、とにかく養育里親の登録を増やしたい。1つ、制度としてできそうなことを質疑の中で思いついたので、残りの50日ほどで動いてみようと思った。
生野区の時に親しんだ人たちが会場にいるだけで安心する。質疑応答の関本さんの誠実さや、赤メガネ先生の軽やかさと温かさを備えた進行もさすがで、濃度の高い時間になった。ぐらついた足元を、立て直した気持ちがした。
終わって21時半、食事もしてないのでまっすぐ帰りたいが「ホテルの番号札」を捨て置けない。なんばで途中下車して、返してきた。情けない。
家に着くと22時半。子どもたちが待ち構えていて、「NoNoGirls」の4次審査の発表を観て、選ばれなかった女の子にかける優しい、時に厳しい言葉が自分にも響いてしまう。
「努力した過去の自分に、中指を立てちゃダメ」
Noを言われ続けると、卑屈になる。でもそれではいいパフォーマンスはできない。ステージには立たないが、仕事を舞台ととらえれば同じだ。
転職エージェントに断られた会社に、直接送ったメールに返信があった。会社のサイトからエントリーしてもらっていいですよ、と。
同時にいろんな話も飛び交い、自営業の方が楽しそうな気にもなってきている。迷う。今日のセミナーで、原点を確かめたことも意味があった気がする。
巡る思考が溶けて、気がついたら寝ていた。
あと56日。

